区分所有法改正の概要について

今回の区分所有法改正は、マンションにおける「2つの老い」、すなわち建物と居住者の老朽化が進行している現状に対応し、マンションの管理・再生の円滑化を図ることを目的としています。

主な改正点は以下の通りです。

  • 集会の決議の円滑化
    • 区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議について、現行の「全区分所有者の多数決」から、「集会出席者の多数決」による方式に変更されます。
    • これにより、例えば、現行法では賛成が2/5では否決されていた議案が、改正後には出席者の2/3の賛成で可決される可能性があります。
    • また、裁判所が認定した所在不明者を、全ての決議の母数から除外する制度が創設されます。これにより、所在不明者の存在によって決議が難航する状況が改善されることが期待されます。
  • マンション等に特化した財産管理制度の創設
    • 管理不全の専有部分・共用部分等について、裁判所が選任する管理人に管理させる制度が創設されます。これにより、管理が行き届かないマンションの状況改善が図られます。
  • 再生の円滑化
    • 建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取壊し等について、これまでは建替えと同様に特別多数決議(4/5以上※)が必要でしたが、これらの決議要件が整備されます。
    • 具体的には、耐震性不足等の場合の建替え決議要件は3/4以上、政令指定災害による被災の場合は2/3以上となります。
    • また、隣接地や底地の所有権等について、建替え後のマンションの区分所有権に変換することが可能になります。これにより、容積率の確保などを目的とした隣接地等の取り込みに係る合意形成が促進されます。

これらの改正により、マンションが新築されてから再生に至るまでのライフサイクル全体を見据え、適切な管理を促し、老朽化したマンションの再生を円滑に進めることが期待されています。特に、集会決議の円滑化所在不明者の扱いの明確化は、今後のマンション管理運営に大きな影響を与えると考えられます。

なお、管理業者が管理組合の管理者(代表者)を兼ね、工事等の受発注者となる場合、利益相反の懸念があるため、自己取引等につき区分所有者への事前説明が義務化される点は、マンション管理法による改正ですが、区分所有者の権利保護の観点から重要な改正点と言えるでしょう。

Follow me!